建築屋の
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設計思想 棚板一枚から設計の対象となる

棚板一枚から「設計」の対象となる
建築設計とは本来、人間工学・力学・造形学・環境学などおおよそ人間に関連した全ての事柄をトータルに結びつけるものである。
棚板一枚でも、そこにのせる物によって強度・機能とちょっとした遊び心など
「設計思想」があって良い。




建物 建物は多分に普遍性を帯びている

建物は多分に普遍性を帯びている
個人住宅であっても、そこに住む人が満足できると同時に、施工者や地域の人々、はたまた前の道を通っている人が納得するような建物が住みやすく、良い建物と言えるのではないか。
単なる”好み”で創らない。”好み”は変化する。




自分で建てる そもそも住宅は自分で建てるのが原点

そもそも住宅は自分で建てるのが原点
建築士はそのサポートとして、技術・法制面やデザイン、長い目で見た機能性などを客観的にアドバイスするもの。インフォームドコンセントと互いの信頼関係が重視される。
全ての人の住まい方は違う。「建物屋」まかせにせず、図面を読み、完成後のライフスタイルをイメージできることが重要。




フィーリング 自分と相性のあった建築屋に、いかにタイミングよく出会えるかが問題

自分と相性のあった建築屋に、いかにタイミングよく出会えるかが問題
「雨、風がしのげればよい」という人から、「ただの箱じゃイヤ」という人まで考え方はさまざま。オールマイティの建築屋などめったにいない。
図面や実物を見てフィーリングを探る。




製品ではない  カタログで商品を選ぶような家創りはヘン

カタログで商品を選ぶような家創りはヘン
住宅などの新築は、一生に一度(一度もない人の方が多い)の高価な買い物である。飽きたり、不満だからと簡単に買い換えたり建替えたりできるものではない。じっくり、時間をかけて。
建物は、パンツやシャツを買うのとは違う。




意匠と構造  「構造屋さん」の顔も見えなければ・・・

建築設計は現在、建物全体をまとめる意匠設計と、いわゆる構造計算などを中心とする構造設計者とに専門職化しているのが一般的である
建物が複雑化・多様化する中で、従来の”カン”や”経験”のみでは処理しきれず、より安全性を高めるためにも部材の寸法などを決定する構造設計者の存在は重要である。
直接接する意匠屋とともに構造屋さんにも着目。




デザイン  丸や三角はデザインではない

丸や三角はデザインではない
アールや斜めの壁・三角形などは、空間の奥行きや広がりを感じさせ、同じ面積でも広く見せるとともに、デッドスペース・不必要な部分をカットして機能を追求した結果である。又、実際には施工費が極端にUPすることは少ない。
機能からのデザインは必然であって”遊び”ではない。




誰のために創る  押し売りなどとんでもない

誰のために創る?
建物は、一般的に多くの職人の手によって創り出される。必然的に全ての人間どうしが信頼関係の上に成り立っている。どこかで納得できない部分があるとこの信頼関係がくずれ、焦点がぼやけてゴールが見えなくなる。
家は自分のために創るものであって、建築屋や営業マンのために建ててあげるものではない。“押し”に負けてどうする。




フレキシビリティ  生活の変化に対応できるのが家

生活の変化に対応できるのが家
建物がその時代を反映し、今より快適・安全にすごせなければならないのは当然である。しかし生活に合わなくなったら捨てたり、建て替えられるものではない。
長いスパンで家を見る必要がある。




建築費  設計屋の建物は高くつく?

設計屋の建物は高くつく?
建築士は施主の立場になって、せっかくだからあれもこれも盛りこみたいと考え、往々にして建築費が嵩む場合がある。同時に支障のないところでの代替や、合理的で安価な工法の工夫などで予算に合わせる調整も行う。
ただ、もう少しの予算プラスで建物が大きな価値をもつ事もあり、
要は「何を重視するか」である。




設計施工  設計料は余計な費用か?

設計料は余計な費用か?
一般的に住宅規模程度の建物の場合、工務店など施工業者に設計を含め一括して依頼する場合が多い。わずらわしくなく設計料も不要で、合理的に見える。選択肢のひとつであるが、現在ではほとんどの建物の建築において何らかの図面を必要とする。したがって、「設計込み」といっても何がしかの図面代なり、設計料は支払っている。
設計と施工を分離して依頼した場合、建築費用とは別に設計料が必要となるが、
複数の施工者で見積比較したり、 見積内容の検証などで全体の 建築費用がDOWN する場合もある。




設計料  現実にはせいぜい消費税くらい

設計料はベラボウ?
設計行為は実際の現場で建物を創ってゆく大工さんなどと違い、形が見えにくいことから高額なイメージがある。確かにほとんどがヘッドワークで、図面として表現されるものも一部でしかない。
しかし全体工事費から考えるとわずかともいえる。構造計算の要・不要や、必要な図面によっても異なるが、木造2階建の戸建て住宅で総工事費の
5%からせいぜい10% くらいで、ほとんどが 消費税程度 の金額である。




設計料の圧縮  スムーズなプランニングが設計料を抑える

スムーズなプランニングが設計料を抑える
設計料がふくらむ大きな要因はプランニングの長期化である。 概して設計屋は計画の段階でかなり細かい部分までイメージしているもので、計画案の一部変更が全体バランスを大きく崩し、初めからプランをやり直さなければならない事がある。
したがって、
当初の段階で具体的な要望をどんどん出してゆく事 が、時間のかかるプランニング作業をよりスムーズに進めることとなる。
又、フィーリングがマッチしていると、より早い段階で満足できるプランがまとまることとなる。




見積書  見積金額は予測建築費

見積金額は予測建築費
建築は多くの職人の手作業によるところが大きい。最近は既製品が増えたものの、これらの職人の人件費(日当)が建築費のかなりの部分を占める。
ところが作業内容によっては実際に施工して見なければわからない場合もあり、施工費が予測できない事もある。
したがって実際の建築費は、完成後でなければわからないというのが正直なところである。




プランが命  建物は平面プランが重要

建物は平面プランが重要
建物の平面計画は、日常の使い勝手やライフスタイルに影響をあたえるものである。スケール感や動線を十分に考慮しなければならないと共に、構造強度の検討も不可欠となる。
建物はまず平面プランから、色柄や目先の形にまどわされないで。




なぜ新築  せっかくの新築、少し冒険も

せっかくの新築、少し冒険も
今の建物の使い勝手が良いのは、それに慣れているからということもけっこうある。住宅の建て替えなどで、以前とほぼ同じ間取りを要望される場合がある。せっかくの新築、生活の仕方にもう少し冒険を加えてみてもよい。建て替えの価値が増すかも知れない。
既成概念や実体験にとらわれすぎない。




小さいから広く  小さな家こそ、空間を大きくとって広く使う

小さな家こそ、空間を大きくとって広く使う
毎日の生活にとって 水廻り は、使用頻度も高く大切な部分。又、 建物の大・小にかかわりなく面積も同じように必要である。 日常的に使う部分を中心に、十分な面積を確保して生活にゆとりを。
同時に、狭い
玄関などはせせこましくて家そのものを小さく感じさせる。 多用途として複合的な機能をもたせるなど、建物を隅々まで日常的に使う工夫をする。




バランス  建築に「正解」はなく、要はバランスである

建築に「正解」はなく、要はバランスである
建築技術に不可能はなく、およそどのような建物でも建築可能である。又、建築において「こうでなければならない」というものもなく、自由なセンスで家は創れる。
ただ、広さや予算・地域性なども含め、全体としてバランスがとれていることが大切である。




リフォーム  大胆に変えてみる

大胆に変えてみる
建築は改修が原点であり、構造躯体がしっかりしていればリフォームで十分対応できる。リフォームの基本は「大胆さ」であり、あまり変わりばえしないのでは多額の予算を投入する価値がうすれる。特に店舗などでは大切な要素である。
リフォームによって、新築にはない思いがけない効果が出ることもある。




店舗  店舗創りはソフトとSet

店舗創りはソフトとSet
店舗は外観や内装・設備などのハードと、商品内容・単価・サービスなどのソフト部分とが総合的にバランスのとれていることが重要である。
中途半端は「ちょうど良い」ことではなく、常に客観的な目で中途半端を取り払うことである。

徹底的なマーケティングが個性的な店舗を創りだす。




設計屋ぎらい  工務店や職人さんは設計士を嫌う?

工務店や職人さんは設計士を嫌う?
主に住宅などを手掛ける町の工務店や大工さんは、往々にして設計事務所を毛嫌いする場合がある。これは日本の住宅が本来、職人さんの手によって全て担われてきた歴史によるものである。設計屋の中には生半可な技術で横柄な人も少なくなく、職人さんたち古参者がプライドを傷つけられまいとするのもわかる。しかし設計屋ならではという技術や発想もあり、これらが建築施工者の技術アップにつながることも多いはずである。
新参者を締め出すのではなく、小さな工務店なども設計屋をどんどん利用するべきであると思う。




べた基礎はベター?  かならずしもべた基礎が頑丈ではない

かならずしもべた基礎が頑丈ではない
阪神大震災後、木造住宅の“べた基礎”が急激に普及した。べた基礎は本来、非木造建物を軟弱地盤に建築する際、建物の荷重を分散させるために地中に広い面積の基礎(耐圧版)を施工する工法である。現在木造住宅で施工されている“べた基礎”は、いわば厚い土間を地上に据え置いたようなものが多い。これは掘削を少なくして残土処分の費用を抑えると同時に、型枠などの手間を削るのが狙いのようである。はたして“べた基礎”と言えるかどうか疑問もあるが、施工側の合理性と建物強度が両立されるならば有効である。ただ、設備配管をコンクリートに打込むケースが多いなど問題もあり、建物や地質によっては従来の布基礎が合理的な場合もある。
建築は施工の良否がその性能を大きく左右するものであり、
いくら“べた基礎”といっても「きちっと」施工されていないものは基礎の役目を果さない。




既製品  建物の原点はやはりオーダーである

建物の原点はやはりオーダーである
現在メーカーからさまざまな既製品が製造されている。カタログ一冊で住宅ができあがるほどである。工務店や職人さんも既製品に馴れてしまっていて極力出来合いをはめ込もうとするのである。確かに既製品はきれいで、高級感もある。それゆえに傷や汚れも目立つ。オーダー=高いというイメージがあるが、オーダーは素材を変えることによって価格も選択できる。既製品は決して安いものではなく、全ての建物にぴったり納まるものでもない。特に内部ドアなどの寸法やデザインは住み手、建物によってさまざまである。
できあがりが美しいだけでなく、建物にマッチした“使える”ものを!




竣工はスタート  建物は建てることが目的ではない

建物は建てることが目的ではない
当然のことであるが、建物は住み、使うために建てるのである。使い勝手の悪い部分や、不具合は住んでみてわかることが多い。又、雨漏りなどの不良が見つかる場合もある。大切なことは、不具合を修理したり改善できる構造やディティールになっているかどうかである。基本がしっかりしている“本物”はリフォームにも耐え長生きする。建築物は本来長寿なものであり、年月をかけて完成させてゆく出発点が竣工と言える。
近年は建物を建てることを目的とする傾向が多いように見える。




高気密・高断熱  省エネか、少エネか?

省エネか、少エネか?
近年、高気密・高断熱住宅がもてはやされていて、さまざまな建材や工法が氾濫している。確かにツーバイフォーなどは気密性を求めるのに適した工法であるが、必ずしも「高」にしなければならないわけではない。構造的な合理性などのメリットも多く、それらを生かすだけでも十分有効である。高額なペアガラスの窓を開け放して寝たり、全館完全空調の中にストーブを持ち込むなどは猫に小判と言わざるをえない。
日本の風土、慣習をとりこんだ少エネ住宅も悪くはないと思うが。




プレカット  シンプルな計画が身上

シンプルな計画が身上
大工さんの“きざみ”の手間を省くため、コンピューターを用いて材木を工場加工するのがプレカットである。早くて便利なことから近年では主流となっている。ただ複雑な建物や、特殊な構造の場合は無駄が多いように感じる。又、合理化の中で部材が大きめであったり、施工上の安全率などから木材量は少し多めとなる。本来、職人の技術低下への対策と省力化がねらいであり、複雑な仕口も難しいことから現場での接合はいきおい金物に頼ることとなる。
全てがプレカットラインに載るわけではなく、なじまない建物もある。プレカットはそれ用のプランが必要かも。




役所は厄介?  話せば分かるはず

話せば分かるはず
設計屋にとって役所はなかなか馴染めなく厄介な所に写る。各市や県には建築基準法以外にさまざまな条例や指導があり、ある市では認められるものが別の所では認められないこともある。ともすれば「確認が早くおりればよい」との思いから、つい役所の“言いなり”という事が多い。しかし、役所が全て“正”とは限らず、施主や住民の立場に立って協議を尽くすことが重要である。したがって確認申請作業にはそれなりの時間と費用がかかることとなる。
確認申請は許可ではない。内容によっては、施工費や生活空間、機能に大きな影響を与える。




竣工はさみしい  竣工はさみしい

竣工はさみしい
竣工に至るまでには様々な過程を経る。
設計屋は工事監理者として現場が図面通り施工されているか、また、現場で不具合が発生した時にその解決方法を考え指示を与える立場にある。土工事から始まって基礎工事、く体工事、内外装工事へと工事が進行していく間、あらゆる職種の職人さんが“やって来ては仕事を終えて去っていく”という繰り返しのなか、最初から最後までその建物を見守っている人間でもある。現場には設計段階では考えもつかなかった落とし穴が必ずあり、その度に
“もっとええ手”を知恵を絞って考え出す。気になってついつい現場へ足を運ぶ回数も増える。
建物も人間と同じ、手のかかったもの程竣工時のさみしさも大きい。




定価って?  定価は一定価格ではない

定価は一定価格ではない
住設メーカーや建材メーカーのカタログのほとんどには「定価」が印刷されている。しかし実際に工務店に入ってくる値段は定価ではない。定価の何%かで入ってくるのである。メーカーと工務店の間には商社(問屋)が存在している。数社の商社を経過する場合もあって、それぞれに定価の何掛といった出し方をしている。当然末端の商社にいくほど高くなるわけである。工務店がどの段階の商社と取引するかによって価格が変わり、建築費にはねかえってくるのである。住設機器などで極端なものは定価の15%などもあるらしい。もともと既製品の値段は、材料代プラス工賃という単純なものではなくわかりにくいが、さらに難解である。既製品を積み重ねた住宅など、ほんとうはいくらで出来るのだろう。定価とは工務店に頼まず、自分で家を建てる人が末端の建材屋さんで購入する価格なのだろうか。
誰のため、何のために定価があるのだろう?




色はいろいろ  実は図面に色はついている

実は図面に色はついている
設計屋は図面を書いている時にある程度の色を頭に浮かべている。この部分はアクセントとして象徴的な色を塗るためにこういう形にしよう、といった具合である。パースなどがなくてもある程度の色が図面に盛り込まれていると言ってよい。
住宅など仕上材の色柄は、よほど特殊なものでない限り、基本的には住み手の好みで良いと思う。すぐに見慣れるし、飽きればやり替えられる部分が多い。ただ、「好きな色」だけの多用はひんしゅくものである。
場合によっては好きな色を抜け出して、図面に塗られている色のアドバイスを聞くのも良いのではないだろうか。
形とのバランスもくずさないように。





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