男湯・ニューハーフ湯・女湯




 いや〜、見た瞬間はびっくりしましたよ。
ある大規模銭湯でのこと、浴室から出て脱衣場を横切って思わず化粧台を振り返ってしまった。そこにはロングヘアーをドライヤーで整え、鏡に向かって化粧に余念のない美女二人。
一瞬の頭の中の“コンラン”にしどろもどろの自分がいた。「えぇーと…ここは男湯で…こちらに従業員以外の女性が混ざることはありえないのであって…又、その逆もありえないので…ここはお風呂屋さんで…」「女風呂の化粧台が混雑していて、困っているお客さんのために親切な従業員が男のほうを利用させてあげている…ん〜それもヘン…」。
おもしろいのは、周りの男性客が二人に興味をいだく様子もなく、すっぽんぽんでうろうろしていることであった。事態を把握したのは、二人が身づくろいをしてさっそうと男子脱衣場から去り、ロビーにいた二人がビールを注文する声を聞いたときである。なるほど、それにしてもあのスタイルで堂々と男湯に出入りする“彼女”たち、もっと言えば人の目など気にせずお風呂屋さんを利用しようという勇気、又、それを受け入れる風呂屋のふところの大きさに乾杯!まさにバリアフリーかもしれない。
 それにしても、周囲の男性客たちはなぜ平然としていられるのだろう。みんな常連客で周知の事実なのだろうか。それとも男女が混ざることがありえない風呂屋という世界が今や前近代的で、そういう認識がうすれていて気づかないのだろうか。周囲のことに無関心で目にもとまらず、知らん顔なのであればさみしい。

 これからの風呂屋を考えるとき、文化の変化も考えて、男湯・女湯以外にニューハーフ湯もあれば、もっと気軽に利用できるニーズが広がるかもしれない。いや、風呂屋は客を選ばない数少ない商売の一つである。みんなで同じ湯につかり、隔たりを取りはらうのが風呂屋文化なのかもしれない。きっとそうだ。




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