第二寿湯


改修コンセプト

正直なところ「こまった!」と思いました。
第2寿湯は近鉄布施駅の北約500m、町工場と住宅が建ち並ぶ地域にあります。増築を繰り返して増床されているものの、本来は小さなお風呂屋さんでした。
オーナーから出された難題は
  • 改装して入浴客数をほぼ2倍にしたい。
  • 100%の家庭風呂普及に対応する風呂屋をめざして、特徴ある風呂創りを。
第2寿湯は、町中にある“庶民的なお風呂屋さん”の典型です。ほぼ200mで隣風呂が並んでいて商圏が非常に狭く、人口密度もあまり高くない地域です。家庭風呂の普及と共に絶対的風呂屋客数が減少し、お風呂屋さんの衰退が急速に進行しつつある地域と言えます。現状客数の維持もむづかしく、どちらかと言うと客数の減少カーブをいかに緩やかにするかを考えるべき地域のお風呂屋さんです。「こまった」。
ただ、第2寿湯にはすでに乾式サウナやスチームサウナ、超音波風呂などの設備がととのっていると同時に、備長炭を中心にオーナーのこだわりと個性を感じさせる風呂屋創りの姿勢がありました。したがって今回の改修を「メンテナンス改良プラスアルファー」と位置づけ、現在の施設を100%活用させる事を中心に、健康作りをテーマとする個性的な風呂屋創りをめざせば、商圏の拡大と新規客の掘り起し、客のリピートにつながるのではないかと考えました。
具体的には

  • 家庭風呂客をターゲットとして低い温度の浴槽を作る。
  • 乾式、湿式サウナと水風呂の充実。
  • 砂利や備長炭の活用で健康志向と個性を強調する。
  • 健康やダイエットに効果のある超音波風呂などの設備強化。
  • 排水溝のない洗い場を整備、清潔な浴室イメージを作る。
  • 地域へのアピールと入りやすさをめざして、外観及びエントランスの全面改修。
などの改修ポイントにそって、全面的な内装のやり替えを行いました。
浴槽は現状2浴槽に加え、電気浴とエステ浴をセットした砂利浴槽を追加しました。これは、電気とエステ以外に足踏みでツボマッサージができる欲ばりな浴槽となっています。さらに3槽は高・中・低3種の温度差がついており、低温浴槽によって家庭風呂客にも無理なく入浴できるようにしています。主浴槽は自動管理で高温を維持させておき、これのオーバーフローと水位計による給水のみを行うことによって中温浴槽を作り出す。さらに低温浴槽は、主浴槽のろ過器戻りのぬるい湯を分岐して給湯しています
つまり、各浴槽のオーバーフローと各配管の振り分けによって、ろ過器1台で3種の温度差の浴槽を作り出し、水質の維持を行っています。
第2寿湯は本来小規模なお風呂屋さんで増床を繰り返しており、この増床部分の有効な活用が課題となっていました。特に女子の2階浴室は急な階段がネックとなります。今回の改修で乾式サウナをさらに増床して、この2階部分の有効活用を試みました。2階浴室をサウナ客スペースとして充実させ、一部の天井をテント張にして半露天風呂空間にするなどの工夫をしています。又、従来は無かった冷水風呂を男女共に新設し、スチームサウナに砂利を敷くなどの新しい試みで、“のんびりスペース”の充実をはかっています。さらに第2寿湯の大きな特徴として“備長炭サウナ”があります。これはオーナーのアイデアで従来から取り入れていたものですが、遠赤外線をより有効にサウナへ利用しようとしたものです。今回これを強化徹底させて「実用新案」取得にいたっています。他に第2寿湯独自の取り組みとして、番台をあえて残しつつ飲食対応カウンターを下足室土間に配置したこと、狭さを逆手にとった電気風呂の電極板配置、スチームサウナ内の水風呂、浴室内デッドスペースを利用しての熱帯魚水槽などがあります。

↑熱帯魚水槽
←砂利を敷いたスチームサウナと
 サウナ内水風呂
予算が限られたリフォームでは施工範囲を限定することが重要です。今回の工事では脱衣場をほぼ既存のままとしています。又工事費をおさえるため、主要な施工業者はオーナーの直接発注方式を取りました。
なお、女子脱衣場がのぞかれない番台構造や便所の洋式便器はオーナー側の反対で実現しませんでした。又、“掃除嫌い”のオーナーに採用を試みた親水性のタイルも、認識の相違が大きく、満足できるものではありませんでした。残念!