のれん

近年はのれんを掲げる商店がめっきり減った感がある。昔は店の顔として大切に扱い「のれんを守る」などと言って“老舗”の象徴でもあった。今やのれんを掲げているのは飲み屋などの一部飲食業と風呂屋くらいで、中でも象徴として「不可欠」というのは風呂屋だけかもしれない。
ただ、風呂屋ののれんも最近では石鹸メーカーの広告入りが主流で、カラフルではあるが個性のないものが多くなった。お馴染みの「ゆ」のマークののれんも珍しくなってしまったが、中には昔ながらの重厚なオリジナルののれんをかけているお風呂屋さんもある。タテ長の“日除けのれん”などは風呂屋らしからぬしつらえで風情があり、入らなければならない気にさせられる。又、古くなったのれんをゆず湯の袋に利用したり、正月には「謹賀新年」ののれんに掛け替えるなど“のれん”を大切にしている所もけっこうあってうれしい。
思えば子供の頃は、風呂上りに濡れた頭をのれんでふきながらくぐって出たものである。