浴室にあえて“禁煙”と書いてあるお風呂屋さんは少ない。浴室での禁煙はあたりまえと言ってしまえばそれまでだが、サウナ利用者の中には露天風呂などでの休憩がてら一服という人もおり、他のお客さんとの間でトラブルになるケースもあるそうだ。もともと“火と水”の相容れない要素で、ごく自然に浴室での禁煙があたりまえになったのであろうが、あらためて「なぜ」と言われれば答えに窮する課題とも言える。実際、サウナ客のタバコの吸殻が捨ててあるのを見て、浴室の一角に灰皿を置きはじめたというお風呂屋さんもある。 最近は全館禁煙というお風呂屋さんも見かけるようになった。風呂が娯楽化する中で滞在時間が長くなる傾向にあり、辛い立場の愛煙家もあろう。これらのバランスも難しいところである。又、客を選ばない商売であるお風呂屋さんにとって、結果として客選別になるとも言え、問題は複雑である。 要するに、お互いにいかに気持ちよく入浴できるか?というモラルの問題であろうと思われる。個人的には、確かに風呂上りの一本は旨いが、しめったタバコは不味い。風呂屋に石鹸の匂いは合うが、たばこの臭いはなじまない。排水口のぬれた吸殻やゴミは気持ちの良いものではなく、つまりの原因でもある。 社会や生活環境の変化に伴い、お風呂屋さんを取りまく状況も変るのは当然であるが、人が人間としてある限り風呂屋文化は生き続けるのではないだろうか。 |